本書『おるねおるね あちらこちら猫さがし』は、写真家・小林哲朗氏による猫写真集の最新刊です。X(旧Twitter)で約8万人のフォロワーに愛される「路地猫さがし」シリーズの続編で、日本各地やタイ・バンコクの街中で撮影された猫の写真を収録しています。日常の風景に溶け込む猫を探す楽しさを味わえる一冊で、視覚的な発見の喜びを提供します。

体裁
本書は、亜紀書房から出版された単行本(ソフトカバー)です。判型はB5判変型で、並製の製本を採用しています。ページ数は96頁となっており、コンパクトながらも充実した内容を収めています。寸法は約18.8 x 13.0 x 1.5 cm程度で、手に取りやすいサイズです。ISBNは978-4-7505-1896-1、CコードはC0072です。価格は税込1,760円で、2025年9月26日に発売されました。この体裁は、写真集として視覚的に楽しむのに適したもので、柔らかいカバーにより持ち運びやすく、日常的に繰り返し閲覧するのに向いています。印刷は高品質で、猫の細部まで鮮明に表現されており、読者が猫を探す際に重要な役割を果たします。
また、初版では一部の写真で印刷ミスが発生したため、出版社から元画像の提供が行われましたが、これは本書のクオリティを維持するための丁寧な対応です。このような体裁は、著者のこれまでの作品群と一貫しており、工場夜景や廃墟などのテーマから派生した猫写真のシリーズとして、視覚芸術の観点から洗練されています。
ソフトカバーの利点として、折り曲げやすく、ページを広げてじっくり観察できる点が挙げられます。さらに、B5判変型は標準的なB5サイズを少し調整したもので、写真のレイアウトに柔軟性を持たせています。この体裁により、本書は単なる写真集ではなく、インタラクティブな体験を提供する媒体となっています。
構成
本書の構成は、写真集としての特性を活かし、物語性よりも視覚的な探索を重視したものとなっています。
目次は特に設けられておらず、96ページ全体が猫の写真で埋め尽くされています。主に、日本各地の路地や街角、さらにはタイ・バンコクの風景を舞台とした写真が並び、各ページに1枚または複数枚の写真が配置されています。写真はカラー中心で、猫が風景に溶け込むように撮影されており、読者が自ら猫を探す形式です。
冒頭部には簡単な内容紹介があり、著者の意図が述べられています。全体を章立てで分けるのではなく、連続した写真の流れで構成されており、ページをめくるごとに新しい発見があるように工夫されています。具体的な構成要素として、以下の点が挙げられます。
- 導入部:本の冒頭で、シリーズのコンセプトを説明した短いテキストがあり、読者を猫さがしの世界へ誘います。
- 本編写真群:日本国内のさまざまな場所(例: 都市部の路地、住宅街、商店街など)と海外のバンコクを舞台とした写真が交互に配置され、多様な風景を楽しめます。各写真にはキャプションが最小限で、猫の位置を明示せず、謎解き要素を強調しています。
- バリエーション:猫の隠れ方が簡単なものから難易度の高いものまで段階的に配置されており、読者の集中力を維持します。例えば、影に潜む猫や遠景に小さく映る猫など、視覚的な工夫が満載です。
- 結び部:最後に著者のプロフィールや関連書籍の紹介があり、シリーズの継続性を示唆しています。
- 付録的要素:出版社のウェブサイトで補完される元画像の案内があり、本の構成を拡張しています。
この構成は、従来の写真集とは異なり、読者を積極的に参加させるインタラクティブなスタイルです。ページ数の96頁は、短時間で楽しめるボリュームながら、繰り返し閲覧するのに適しています。写真のレイアウトは見開きを活用したものが多く、横長の風景写真が効果的に使われています。
また、シリーズ前作『おるね──路地猫さがしBOOK』との連動性を考慮し、未発表の新作写真を中心に編成されています。このような構成により、本書は単なる観賞物ではなく、ゲームのような娯楽性を備えています。
あらすじ
本書は物語形式のあらすじを持つ小説ではなく、写真集であるため、伝統的なプロットはありません。しかし、猫さがしというテーマを通じて、仮想的な「探検の旅」を描いています。
著者・小林哲朗氏がカメラを手に日本各地の路地や街中を歩き回り、日常の風景の中に隠れた猫を発見する過程を写真で表現しています。冒頭から、読者は街を散策するような感覚でページを進め、さまざまな猫に出会います。例えば、住宅街のフェンス越しに潜む猫や、商店街の屋根上でくつろぐ猫、さらにはバンコクの賑やかな市場で溶け込む猫など、多様なシチュエーションが展開されます。各写真は独立していますが、全体として「猫を探す冒険」の連鎖を形成します。難易度の高い写真では、猫が風景の一部のように擬態しており、発見した瞬間の喜びが物語のクライマックスとなります。
日本国内の写真では、馴染みのある路地や廃墟風の場所が舞台となり、身近な異世界を感じさせます。一方、海外パートではエキゾチックな背景が加わり、旅の要素を強めています。あらすじとしてまとめると、著者が猫の気配を追い、シャッターを切る一連の行動が、読者の視線を通じて再現されるのです。
最終的に、すべての写真をクリアした読者は、猫の世界への理解を深め、日常の観察力が向上するという結末を迎えます。このような非線形のあらすじは、写真集の醍醐味を最大限に活かしています。
解説
本書『おるねおるね──あちらこちら猫さがし』は、写真家・小林哲朗氏の代表的なシリーズの第2弾として、2025年9月26日に亜紀書房から刊行されました。著者は1978年兵庫県生まれで、主に工場風景、廃墟、巨大建造物などの「身近な異世界」をテーマに活動しています。これまでに『夜の絶景写真 工場夜景編』や『廃墟ディスカバリー』など10冊以上の書籍を出版しており、猫写真はその一環として人気を博しています。特にX(旧Twitter)アカウント@kobateckでは、毎日「おるね」と題した猫さがし写真を投稿し、約8万人のフォロワーを獲得しています。このシリーズは、2010年代後半から始まり、猫が風景に溶け込む視覚トリックを活用したクイズ形式が特徴です。前作『おるね──路地猫さがしBOOK』(2024年刊)では、初版が完売するほどの反響を呼び、本書はその未発表作を中心にまとめています。
内容の魅力は、猫の可愛らしさだけでなく、発見の喜びにある点です。読者は写真をじっくり観察し、猫を見つける過程で集中力や観察力が養われます。これは、現代のデジタル疲労社会において、アナログ的な娯楽を提供する意義があります。また、撮影場所が日本各地とタイ・バンコクに及ぶため、文化的な多様性を反映しています。例えば、バンコクの写真では、寺院や市場の喧騒の中で猫が静かに佇む姿が、異国情緒を添えています。
著者の撮影スタイルは、NikonとFujiのカメラを駆使したもので、自然光を活かしたリアリズムが基調です。一方で、印刷上の課題として、初版で一部写真の視認性が低かったため、出版社がウェブ上で元画像を公開する対応を取っています。これは、読者との信頼関係を重視した好例です。
レビューでは、Amazonなどで「何度も見返して楽しめる」と高評価を得ており、5つ星の声が多く寄せられています。家族で楽しむ人もおり、子供から大人まで幅広い層に訴求します。
さらに、関連イベントとして、大阪の画廊モモモグラで「おるねおるね展」が開催され、写真展示やグッズ販売が行われました。ここでは、展示写真から71匹の猫を探すチャレンジが人気です。また、東京のPOTATO CHIP BOOKSではフェアを実施し、パネル展や店内猫さがしが企画されています。これらのイベントは、本書のインタラクティブ性を現実空間に拡張しています。
著者のX投稿を見ると、日常的に「おるね」写真をアップしており、書籍化されていない新作も多数あります。例えば、最近の投稿では、影に隠れた猫や遠景の猫が登場し、フォロワーからの反応が活発です。このシリーズの成功は、SNSの拡散力と書籍の永続性を組み合わせたモデルケースです。猫写真のジャンルでは、従来の可愛い猫ポートレートとは異なり、探偵のような探求心を刺激する点が革新的です。
著者は、撮影場所の公開を避け、写真の無断使用を禁止するなど、倫理的な姿勢を保っています。これは、猫の保護やプライバシーを考慮したものです。全体として、本書は娯楽を超え、日常の美しさや発見の大切さを教えてくれます。この一冊を通じて、読者は世界の見方を少し変えることができるでしょう。シリーズの今後の展開も期待されます。

 
  
  
  
  

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