猫写真家・沖昌之の大ヒット写真集第2弾。2019年9月24日発売。一生懸命なのにどこかおかしい猫たちの姿を捉えたショット満載。国内だけでなく台湾や香港の旅先で出会った猫も登場。無我夢中で何かに没頭する猫の表情や行動が、思わず突っ込みたくなるユーモアを誘う。必死さが愛おしく、心を和ませる一冊。

体裁
出版社:辰巳出版株式会社
発売日:2019年9月24日
定価:本体1,200円+税
判型:B5変形
形式:ムック(写真集)
ページ数:詳細不明(写真中心の構成で、約100ページ程度と推定されるが、具体的な情報は入手できず。写真集として見開きを活用したレイアウトが特徴)
その他:カバー付き、フルカラー印刷。猫の写真をメインに、著者の撮影エピソードやコメントが最小限で、視覚的に楽しめるデザイン。
もくじ
- 街で見つけた必死すぎるネコ
- 躍動感あふれる個性豊かな姿
- 外猫たちの日常を切り取る
写真集のため、厳密な章立てではなく、テーマごとに写真がまとめられている。見開きページで写真の組み合わせを楽しむ構成が特徴。各写真に詳細なキャプションはなく、視覚的なインパクトを重視。
解説
『必死すぎるネコ 前後不覚篇』は、猫写真家・沖昌之氏による人気写真集シリーズの第2弾です。前作『必死すぎるネコ』が大ヒットした後、2年をかけて集めた「必死」な猫の写真を厳選してまとめています。将棋界のレジェンドである加藤一二三氏(ひふみん)も推薦するほど、猫好きの心を掴む内容です。テレビ番組『天才! 志村どうぶつ園』や『スッキリ』で紹介された前作の流れを汲み、猫の日常をユーモラスに切り取っています。
この写真集の魅力は、猫たちが「必死」になる瞬間の意外性と愛らしさにあります。沖氏は、猫の急な行動の変化を捉えるのが上手く、例えばヒモが長期間置かれていても無視していた猫が突然夢中になる様子を撮影します。沖氏は「僕はあくまでネコの日常を撮りたいと思っているのですが、『このネコ、めっちゃ必死やな』とか、『真剣すぎる』とか、ついブツブツ言いながら撮影してしまうんです」と語っています。こうした日常の「必死さ」が、視聴者を笑わせ、癒やします。
具体的な写真のエピソードをいくつか紹介します。表紙の写真は、インパクト大の「目隠し猫」です。この猫は文化住宅のような場所に住み、階段に張られた紐に顔を擦り付けて匂い付けをする習性があります。紐が目にかかった状態で止まり、さらに前に押し出してくる様子を捉えた一枚。沖氏は「自分の中ではとても気に入っている写真ですね」とコメントしています。このような偶然の瞬間が、写真集の醍醐味です。
もう一つのハイライトは、猫パンチのシーン。茶トラ猫が黒猫にパンチを繰り出すが、しっかりとガードされてしまう様子です。前作でも猫パンチが話題になりましたが、今作では恋の季節のオスとメスのやり取りを捉えています。オスがメスを追いかけるが拒否され、カウンターを食らう瞬間で、舌まで出ているコミカルさ。沖氏は「オスの方は意外と紳士で、メスが毛繕いを始めても飛び掛らずに、じっと待っていて。それをしばらく見ていて『動かないし、終わりかな』と思ったんですけど、急にオスが『なんか我慢できひん』みたいに近付いて行ったんです」と説明します。予測不能な猫の行動が、撮影の面白さを生み出しています。
ザリガニとの格闘写真もユニーク。猫がザリガニを口に咥え、カメラ目線でポーズを取るようなショット。沖氏は「カメラを構える前は、ネコがハサミで挟まれていて『イタタ』みたいな感じだったんです。それでもう一回やるのかなと思って構えていたら、今度は口に咥えていて。しかもカメラ目線(!)なので、『次はちゃんと撮れよ』みたいな感じもあるのかなと」と笑います。こうした「想像の上を行く」瞬間が、写真集の新鮮さを保っています。
手すりに掴まった猫の写真は、表情の豊かさが際立ちます。この猫は橋の下の泥で遊んで満足し、橋に上がったら嫌いなオス猫がいて、バツの悪そうな顔をする様子。「例えば、上司と一緒の空間が気まずいからトイレに行ったのに、そこに来られちゃったみたいな感じなのかな」と沖氏。人間味あふれる表情が、猫の内面を想像させます。
枝に絡まる紐と格闘中の写真は、見方によっては猫が編み物をしているように見えるユーモアたっぷり。ダイナミックなジャンプショットでは、真剣な表情が必死さを強調し、躍動感が伝わります。また、何かを狙うか追われる緊張した瞬間、追いかけっこの一部始終も収録。手すりに必死にしがみつく茶トラ猫と、それを見つめるサバトラ猫の対比が、外猫たちのワイルドさと可愛さを表現しています。
沖氏の撮影スタイルは、猫に時間を捧げる忍耐強さです。「苦労はないですね。撮れなくても『ネコに会えただけでラッキー』と思っています。自分の時間を全部ネコに渡して、ネコが飽きるまでお付き合いする感じですね」と語り、1時間以上粘ることも。インドア派を自認する沖氏ですが、旅先(台湾、香港など)では朝から深夜まで撮影し、食事も惜しんで現像します。地域の人々の猫愛が、猫たちの自然な姿を引き出しています。
写真選定では、アートディレクターの山下リサ氏と編集者の小林裕子氏が協力。前作よりアクの強いカットを重視し、「可愛いだけじゃなくて何かを感じさせる」バランスを追求。見開きページの「組写真」がポイントで、例えば「隙間を覗く」と「お尻を覗く」の組み合わせ、セミにびっくりとネコにびっくり、逃げる猫と怒る猫の並びなど。こうした工夫が、SNSとは異なる写真集の面白さを生みます。
沖氏のフォトグラファー人生は、元々写真嫌いだったのが変わったもの。30歳で上京し、ブティックで社長の影響で撮影開始。ネコ撮影のきっかけは、公園の「ぶさにゃん先輩。」という太った外猫。マイペースだがご飯アピール上手で、沖氏に「素直に生きる」ことを教えます。この出会いが、会社辞めてネコ写真家になる原動力。Instagramで反響を得、毎日アップを続けるモチベーションに。
全体として、この写真集は猫の「必死さ」を通じて、生きる逞しさとユーモアを描きます。レビューでは「必死すぎるというか、ネコの必死に生きてる姿が逞しい。ネコ同士ケンカしてる時のイカ耳とか獲物と格闘してる時の真剣な表情とか、かっこいいし、その一生懸命さが愛しい」と評され、猫好き必見。外猫の日常を世界的に広めたい沖氏の情熱が詰まった一冊で、ページをめくる度に笑顔になれます。

 
  
  
  
  

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