空前の猫ブームに贈るNHKの異色ドキュメンタリーシリーズ。もの書く人々、つまり作家や文筆家たちの傍らにはいつも猫がいるというコンセプトで、彼らの日常と愛猫とのほのぼのとした関係を描きます。書き下ろしエッセイを交え、著名人による朗読で心温まる25分。猫の自由気ままさと人間の翻弄される姿が、かけがえのない日々を詩的に表現。
体裁
この番組は、NHK Eテレで放送される短編ドキュメンタリー形式を取っています。各エピソードは約25分とコンパクトで、1人の作家とその愛猫に焦点を当てたシンプルな構造。映像は作家の自宅や日常風景を自然に追い、猫の可愛らしい行動をクローズアップします。ナレーションやBGMは控えめで、静かな雰囲気を保ちつつ、作家の書き下ろしエッセイを俳優や女優が情感豊かに朗読するスタイルが特徴です。
シリーズとして不定期に新作が追加され、猫ブームを反映した柔らかなトーンで、視聴者を癒しの世界へ誘います。全体的に詩的な映像詩のような体裁で、ドキュメンタリーの枠を超えたアート寄りの表現が魅力。タイトル「猫も、杓子も。」はことわざから来ており、猫の普遍的な人気をユーモラスに表しています。
視聴情報
主にNHK Eテレで不定期放送され、最近のエピソードは2024年10月頃にオンエアされたものもあります。見逃した場合はNHKオンデマンドで配信されており、月額990円のまるごと見放題パックで全エピソードを楽しめます。単品購入も可能で、1本あたり110円から。NHKプラスでも一部視聴可能ですが、期間限定の場合が多いです。また、DVDとしてシリーズが発売されており、AmazonやNHKのオンラインショップで入手できます。本番組を基にした書籍も出版され、エッセイ集として読むこともおすすめ。放送スケジュールはNHKの公式サイトで確認を。海外からはVPN経由でオンデマンドアクセスが可能ですが、国内向けサービスです。
解説
「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」は、2017年から始まったNHKのユニークな番組で、猫と人間の絆を優しく描くことで、多くの猫好きや文学ファンを魅了してきました。コンセプトはシンプル：「もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた。」という言葉通り、作家たちの日常に寄り添う猫の姿を通じて、何気ない日々の尊さを教えてくれます。猫ブームの真っ只中、まさに「猫も杓子も」猫に夢中な時代にぴったりな内容で、自由奔放な猫の行動が作家の創作意欲を刺激したり、癒したりする様子がほっこりします。
番組の魅力は、なんと言っても各エピソードの個性的な作家と猫のペアリング。たとえば、最初のエピソードでは解剖学者で作家の養老孟司さんと、14歳のまるが登場。鎌倉の自宅で、まるの独特な「どすこい座り」を披露しながら、養老さんがキーボードを叩く横で邪魔をする姿が可愛らしい。養老さんは猫を「不思議な存在」と語り、哲学的な視点で猫との共生を振り返ります。朗読は著名な俳優が担当し、エッセイの深みを増します。
続いて、村山由佳さんと、もみじのエピソード。軽井沢の自然豊かな環境で、永遠のような穏やかな日々を描きます。村山さんは猫を家族の一員として愛し、創作のインスピレーション源として語るシーンが印象的。猫の寿命の短さを思う切なさも織り交ぜ、視聴者の心を優しく揺さぶります。このように、各回は作家のバックグラウンドを軽く紹介しつつ、猫中心の映像で進むので、文学に詳しくなくても楽しめます。
他のエピソードも多彩です。脚本家の尾崎将也さんは、グー、ばなな、ダリなど6匹の猫たちと賑やかな生活。「結婚できない男」などのヒット作を生む傍ら、猫たちのわがままに翻弄される日常がコミカル。朗読は中村アンさんで、ユーモアたっぷり。文筆家の能町みね子さんと小町は、東京と青森の二拠点生活を描き、独自の視点で猫の観察を綴ります。小町の人見知りっぽい性格が、能町さんのエッセイに反映され、微笑ましいです。
時代小説作家の朝井まかてさんとマイケルは、直木賞受賞者の日常を覗き見。24歳のマイケルが高齢ながら元気な姿が心温まる。朝井さんは猫を「家族」として、病気を乗り越えるエピソードを共有します。サイエンス作家の竹内薫さんとゾンゾン、ププは、科学的な目線で猫の行動を分析しつつ、愛情あふれる日々。竹内さんのコメンテーターらしい解説が面白いです。
さらに、福澤徹三さんとくうは、ミステリー作家の視点から猫の神秘性を描き、くうの賢い行動が魅力。桐衣朝子さんと桃太郎は、遅咲きデビュー作家の物語で、61歳で作家になった桐衣さんの人生と、桃太郎の人見知りな性格がマッチ。漫画家一家の賑やかさが楽しいです。柚月裕子さんと山形の2匹の猫は、ぴんと立った耳がチャーミングで、地方暮らしのゆったり感が伝わります。
シリーズ全体を通じて、猫の寿命の短さや、愛するが故の別れの予感がテーマにあり、視聴後に少ししんみりするのも魅力の一つ。たとえば、朝井まかてさんの回では「寿命の短い生き物を愛する欲望」という言葉が出て、猫との絆の深さを考えさせます。でも、重くなりすぎず、猫の可愛い仕草でバランスを取っているのが上手いです。
体裁として、25分の短さがちょうどよく、忙しい人でもサクッと見られます。映像は高品質で、猫の毛並みや表情を美しく捉え、BGMは穏やかなピアノや弦楽が中心。エッセイの朗読部分は、声優や俳優のプロフェッショナルな演技で、文学的な味わいを加えます。シリーズ2や夏スペシャルなど、季節ごとの特別編もあり、継続的に楽しめます。
視聴のポイントは、NHKオンデマンドの活用。見放題パックに入れば、過去の全エピソードをいつでも視聴可能。DVD版は特典映像付きで、コレクション向き。書籍版もおすすめで、番組のエッセイをまとめたものがあり、読書好きにはぴったり。猫を飼っている人なら共感爆発、飼っていない人でも猫の魅力に目覚めるかも。
この番組は、ただの猫番組ではなく、人間と動物の関係性、創作の源泉、日常の小さな幸せを優しく語るもの。猫の視点から作家の内面を覗くような新鮮さがあり、繰り返し見たくなる中毒性があります。たとえば、養老さんの回では、猫が人間のエゴを映す鏡のように描かれ、哲学的。尾崎さんの多頭飼い回は、猫たちの個性豊かな性格が笑いを誘います。
最近のエピソード、桐衣朝子と桃太郎では、家族の絆が強調され、娘さんたちの漫画家生活との絡みがユニーク。桃太郎の「人見知り」ぶりが、作家の内気な一面を象徴しているよう。全体的に、女性作家の回が増え、多様なライフスタイルを紹介しています。
解説を深めると、番組の成功は猫ブームのタイミングだけでなく、NHKらしい丁寧な制作にあります。インタビューは押しつけがましくなく、自然な会話調。猫の行動を予測不能に撮影し、ドキュメンタリーの醍醐味を味わえます。朗読者は中村アン、ほか有名人が起用され、声の魅力でエッセイを昇華。
社会的な文脈では、コロナ禍で在宅時間が増え、ペットとの絆が見直された時期にぴったり。癒しを求める視聴者に寄り添う内容です。将来的にはもっと国際的な作家をフィーチャーするかも？ 現在も新作が作られ、猫文化の象徴として長く愛されそう。
総じて、このシリーズは猫の可愛さだけでなく、人間の心の機微を優しく描く名作。柔らかな文章で語られるエピソードは、毎回新しい発見があり、合計で何時間も没頭できます。猫好きなら必見、文学ファンも楽しめる一品です。
関連リンク
コメント・あしあと